障害福祉サービス事業等の指定申請について

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)に規定される障害福祉サービスを提供する事業者・施設は、サービスの種類及び事業所ごとに、指定を受ける必要があります。ここでは、障害者総合支援法に規定される障害福祉サービス事業のうち、就労継続支援A型、B型を中心に指定手続きに関する基本事項をまとめています。

就労継続支援A型・B型事業

  就労継続支援A型事業 就労継続支援B型事業
事業概要 通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練等の支援を行う。
(利用期間:制限なし)
通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う。
(利用期間:制限なし)
対象者 ①移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
②特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
③就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない者
①就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
②50歳に達している者又は障害基礎年金1級受給者
③①及び②に該当しない者で、就労移行支援事業者等によるアセスメント(分析・評価)により、就労面に係る課題等の把握が行われている者
報酬単価 324~618単位/日
<定員20人以下、人員配置7.5:1の場合>
※利用定員、人員配置に応じた設定
※平均労働時間が長いほど高い報酬
565~649単位/日
<定員20人以下、人員配置7.5:1>
※利用定員、人員配置に応じた設定
※平均工賃月額が高いほど高い報酬

※厚生労働省ホームページより抜粋

指定の要件

指定障害福祉サービス事業者になるためには、次の要件をすべて満たしている必要があります。

  1. 申請者が法人格を有していること。
    ※就労継続支援A型を実施する法人が社会福祉法人でない場合は、当該法人は専ら社会福祉事業を行うものでなければなりません。
  2. 事業の従業者の知識及び技術並びに人員が条例で定める基準を満たしていること。
    ※人員基準、資格要件については後述します。
  3. 条例で定める基準に従って適正な事業の運営ができること。
  4. その他障害者総合支援法第36条第3項第4号から第13号に掲げる欠格事項に該当しないこと。

指定申請の手続き

1.事業所立ち上げ準備

  • 法人格の取得
    定款に事業目的が記載されていない場合は、目的変更登記が必要です。
    <記載例>「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」
  • 基準の確認、必要書類の作成
  • サービス管理責任者の資格取得
    相談支援従事者初任者研修講義部分(2日過程)+サービス管理責任者研修(3日間)の計5日間の受講が必要です。(滋賀県での実施はそれぞれ年1回です)
    こちらの研修さえ受ければいいという訳ではございません。実務経験要件等も必要となりますので、ご注意ください。

    滋賀県では、下記団体が委託を受けて実施しており、研修情報は下記ブログで発信されています。

     滋賀県障害者自立支援協議会(ブログ)

2.事前協議

指定を受けようとする日の3か月前を目安に、具体的に実施予定の事業内容等の協議を行う必要があります。電話で日時のアポイントをとった後、事業計画や従業員の配置状況、事業所の平面図面等を持参します。施設が賃貸物件の場合は、契約締結前に相談しましょう。

3.申請

  • 遅くとも予定している指定日の1か月前までに提出してください。
  • 必要な添付書類は、サービス種類ごとに異なります。
  • 必要書類については、後述します。
  • 多機能型事務所として一体的に複数のサービスを行う場合には、申請書類は一括で提出してください。
  • 申請書の様式等は、下記滋賀県のホームページからダウンロードできます。
    自動計算式になった書類もありますので、ご注意ください。

     滋賀県「障害者総合支援法事業者指定申請」関連ページ

4.審査と指定

  • 提出書類に基づき指定基準を満たしているかの審査が行われます。
  • 審査完了後、指定となり指定通知書等が申請者(法人)宛に郵送されます。
  • 指定の有効期間は6年です。
    (指定通知書に有効期間が記載)

5.指定の後は

  • 独立行政法人福祉医療機構「WAM NET(ワムネット)」等に指定事業者の情報を公表する必要があるため、別途処理が必要です。
  • 行政庁(滋賀県)から、各市町・関係機関等に通知され、新規指定業者については「滋賀県公報」に登載されます。
  • 適宜、運営上の確認・実地指導が行われます。


  • 各種届出
    ①業務管理体制の整備に関する届出
    平成24年4月から、不正事案の発生防止及び事業運営の適正化を図るため、全ての指定障害福祉サービス事業者等に法令遵守等の業務管理体制の整備とその届出が義務付けられました。
    ②事業の開始届
    指定申請とは別(または同時)に、「障害福祉サービス事業等開始届」を提出します。
    ③各種変更届出の手続き
    変更の日から10日以内に知事に対して届出が必要です。
    変更届出が必要かどうかは、サービスの種類によって異なりますが、共通して言えることは、指定申請の際に記載した事項について変更があった場合に届出が必要となります。
    ④指定の更新
    指定期間は6年ですので、指定の更新手続きをしなければ、指定の効力を失います。


就労継続支援A型・B型の各種基準

人員基準、設備基準については、A型・B型共通ですが、最低定員に関してはそれぞれ設定がありますので、ご注意ください。

就労継続支援A型・B型の基準
人員基準 職業指導員 1人以上
生活支援員 1人以上
・職業指導員及び生活支援の総数は、常勤換算方法で利用者数を10で除した数以上
・職業指導員、生活支援員のいずれか1人以上は常勤
サービス管理責任者 ・利用者数が60人以下=1人以上、利用者数が61人以上=1人に利用者の数が60を超えて40またはその端数を増すごとに1を加えて得た数以上
・1人以上は常勤
<責務>
・個別支援計画の作成に関すること。
・利用申込者の利用に際し、その者の心身の状況、当該事業所以外における指定障害福祉サービス等の利用状況等を把握すること。
・利用者の心身の状況、その置かれている環境等に照らし、利用者が自立した日常生活を営めむことができるように定期的に検討するとともに、自立した日常生活を営むことができると認められる利用者に対し、必要な支援を行うこと。
・他の従業者に対する技術指導及び助言を行うこと。
管理者 ・1人
<責務>
事業所の従業者及び業務の管理その他の管理を一元的に行うこと。
・事業所従業者に基準等を遵守させるために必要な指揮命令を行うこと。
設備基準 訓練・作業室 ・訓練又は作業に支障がない広さを有すること。
・訓練又は作業に必要な機械器具等を備えること。
相談室 ・室内における談話の漏洩を防ぐための間仕切り等を設けること。
洗面所・便所 ・利用者の特性に応じたものであること。
その他 ・多目的室その他運営に必要な設備
最低定員 A型の場合
10人(雇用契約を締結した利用者)
雇用締結未締結利用者は。利用定員の100分の50以内及び9人を超えてはならない。
B型の場合
・単独で実施する場合:20人
(ただし。当該事業を開始した日から3年以内は10人以上とすることが可能。)
・多機能型で実施する場合:10人

資格要件について

管理者(施設長)

資格要件(下記いずれかに該当するもの)

  • 社会福祉主事任用資格要件に該当する者
    (社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉事業従業者試験合格者等)
  • 社会福祉事業に2年以上従事した者
  • 企業を経営した経験を有する者

サービス管理責任者

資格要件(研修修了要件と実務経験要件の両方を満たす者)

①研修修了要件

相談支援従事者初任者研修講義部分(2日過程)+サービス管理責任者研修(3日間)の計5日間の受講が必要です。(滋賀県での実施はそれぞれ年1回です)
こちらの研修さえ受ければいいという訳ではございません。実務経験要件等も必要となりますので、ご注意ください。

滋賀県では、下記団体が委託を受けて実施しています。
 滋賀県障害者自立支援協議会(ブログ)

②実務経験要件
 障害者の保健・医療・福祉・就労分野における支援業務について、下記一覧表の実務経験を必要とします。

範囲 業務内容 経験年数
1相談支援業務 施設等において相談支援業務に従事する者 5年以上
医療機関において相談支援業務に従事する者で、次のいずれかに該当するもの
(1)社会福祉主事任用資格を有するもの
(2)訪問介護員2級以上に相当する研修を修了した者
(3)国家資格等を有する者
(4)施設等における相談支援業務、就労支援における相談支援業務、特別支援教育における進路相談・教育相談の業務に従事した期間が1年以上である者
就労支援に関する相談支援の業務に従事する者
特別支援教育における進路相談・教育相談の業務に従事する者
その他これらの業務に準ずると都道府県が認めた業務に従事する者
2直接支援業務 施設及び医療機関等において介護業務に従事する者 10年以上
障害者雇用事務所におちて就労支援の業務に従事する者
盲学校・聾学校・養護学校における職業教育の業務に従事する者
その他これらの業務に準ずると都道府県が認めた業務に従事する者
3有資格者等 上記2の直接支援業務に従事する者で、次のいずれかに該当する者
(1)社会福祉主事任用資格を有する者
(2)訪問介護員2級以上に相当する研修を修了した者
(3)児童指導員任用資格者
(4)保育士
5年以上
上記1の相談支援業務及び上記2の直接支援業務に従事する者で、国家資格等による業務に3年以上従事している者 3年以上
  • 国家資格等とは、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士(管理栄養士も含む)、精神保健福祉士のことをいいます。
  • 相談支援業務とは、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の日常生活の自立に関する相談に応じ、助言、指導、その他の支援を行う業務をいいます。
  • 直接支援業務とは
    ①身体上または精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき、入浴、排せつ、食事その他の介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行う業務
    ②日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、生活能力向上のために必要な訓練その他支援を行い、その訓練等を行う者に対して訓練等に関する指導を行う業務、その他職業訓練または職業訓練に係る業務
  • 1年以上の実務経験とは、業務に従事した期間が1年以上であり、かつ実際に業務に従事した日数が1年当たり180日以上であることを言うものとします。例えば、5年以上の実務経験であれば、業務に従事した期間が5年以上であり、かつ実際に業務に従事した日数が900日以上であることをいいます。

申請に係る添付書類等一覧

滋賀県での「就労継続支援」事業の指定申請に係る添付書類の一覧表です。
様式欄は、滋賀県の申請書ダウンロードの様式番号に対応しています。

必要(添付)書類 様式番号 注意点等
指定申請書    
別紙(他の法律において既に指定を受けている事業等について) 別紙  
連絡先などについて 別紙連絡先  
指定に係る記載事項 付表(12)  
添付書類一覧表 添付書類一覧表  
その法人の登記記載事項証明書または条例等   ①目的に申請に係る事業を実施する旨の記載があるか 
②市町村が申請する場合は、条例の写し
定款・寄付行為等 A型のみ必要 申請に係る事業を実施する旨の記載があるか
従業者等の勤務体制及び勤務形態一覧表 参考様式1 ①従業者の職種・員数が付表の同欄の人数と合致しているか 
②勤務時間の記載
組織体制図   別紙2で兼務職員となっている者の兼務職名が記載されているか
管理者の経歴書 参考様式2  
サービス管理責任者の経歴書 参考様式2  
実務経験証明書、研修修了書(写) 参考様式3 ①サビ菅研修修了証の写し 
②資格証明書等のコピーを添付
平面図 参考様式4 ①各室の用途・面積が記載 
②事業専用部分と他事業の共有部分が色分けされているか 
③複数の避難経路が確保・明示されているか
居室面積等一覧表   平面図に記載している場合は不要
設備・備品等一覧表 参考様式5 ①訓練、作業に必要な機械器具等を記載 
②建物が火災に対し安全性を確保していることを明記 
③消火設備その他の必要な設備の状況を記載する 
④想定される災害に関する通報、連絡体制、避難計画等を記載
運営規定   ①各サービスの種類により記載項目が異なるので留意 
②営業日および営業時間 
③虐待の牛のための措置(基準第3条第4項、責任者の設置、従業者に対する研修の実施等を記載)
④通常の事業の実施地域を記載 
⑤緊急時等における対応方法を記載 
⑥主たる対象とする障害の種類を定めた場合には当該障害の種類を記載 
⑦定期的な避難訓練、救出訓練等の実施計画を記載 
⑧その他重要事項を記載
指定障害福祉サービスの主たる対象者を特定する理由 参考様式6 主たる対象とする障害の種類を定めた場合に提出
利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要 参考様式7 ①苦情等に対応する常設の窓口(連絡先)及び担当者が記載されているか 
②苦情を解決するための処理体制及び手順が記載されているか
協力医療機関との契約の内容   契約書の写し等の添付でも可。(契約書の書式は任意)
障害者自立支援法第36条第3項各号の規定に該当しない旨の誓約書 参考様式8  
事業計画書   事業開始1年間の計画
収支予算書   事業開始から1年~3年間の計画
損害賠償発生時の対応方法を明示する書類   ①損害保険証書の写し 
②加入予定の場合は、予約を証する書類、加入する旨を記載した確約書を添付 
③損害保険以外の方法をとる場合は、その方法を明示する書類を添付
介護給付費等算定に係る体制届出書 様式第5号 該当事業の必要欄に記入されているか
障害福祉サービス事業等開始届 別記様式第17号  

 

就労支援施策の現状

厚生労働省ホームページの平成30年3月時点での各種データの取りまとめにおいて、就労支援関連のデータを抽出しています。

障害者総数約964万人中、18~64歳の在宅者数は約377万人です。

平成30年3月時点で就労支援関連のサービス利用者は下記の通りです。

・就労移行支援    約3.3万人
・就労継続支援A型   約6.9万人
・就労継続支援B型  約24.0万人

・一般企業の雇用者数  約53.5万人 ※45.5人以上の企業(平成30年6月)

就労系福祉サービスから一般就労への移行は、平成15年の1,288人から比較すると、平成29年で14,845人と11.5倍に増加していますが、移行率は4.3%に留まっています。
就労移行支援からは27.0%と就労継続支援A型B型よりも高くなっていますが、就労継続支援A型では微増、B型では横ばいとなっており、一般企業への就職率は決して高くありません。

そのような環境から、一般企業への就職を目指すというお題目はありながら、障害基礎年金と合わせて就労継続支援B型での賃金・工賃によって「自立可能な福祉的就労」を目指すべきではないかと考えられ、賃金・工賃の向上が必要とされています。

平成30年度の平均工賃は下記の通りです。

施設種別 平均賃金・工賃 施設数
(箇所)
月額 時間額
就労継続支援B型事業所
(対前年度比)
16,188円
(103.3%)
214円
(104.5%)
11,750
就労継続支援A型事業所
(対前年度比)
76,887円
(103.8%)
846円
(103.4%)
3,554

 昨今、各地で経営難によるA型事業所の閉鎖とそれに伴う利用者の解雇が続発しています。「経営悪化」の主な原因は、国が2017年4月、省令を改正し、給付金(利用者一人当たり日額約6000円)を利用者の賃金に充てることを原則禁止したこと、さらに2018年度からは、労働時間の短い利用者への給付金額が大幅に減額されたことなどによります。
 NPO法人就労継続支援A型事業所全国協議会(全Aネット)の調査によれば、A型事業所の7割以上は事業収入だけでは利用者に最低賃金を保障することができない、つまり障害福祉サービスへの給付金の一部を充当しない限りは、利用者に最低賃金を支払えないとされています。
 A型事業所がこのような経営状況に置かれているにもかかわらず、A型事業所数もその利用を希望する障害者数も増え続けるのはどうしてでしょうか?
 それは、一般就労を希望しても現実には、企業等に就職できない障害者にとっては、工賃収入が月額平均16,000円程度で、障害基礎年金と合わせても生計が困難なB型事業所の現状を考えれば、賃金月額平均76,000円と障害基礎年金と合わせれば何とか生計が維持できるA型事業所以外に選択肢がないことがその主な理由といえます。
 しかし、多くのA型事業所の現状から、利用者に最低賃金以上を支払える良質な仕事の安定確保支援を含む、何らかのテコ入れをしない限りは、その持続可能性自体が問われかねないことが深刻に懸念されます。