相続人の範囲(誰が相続するのか)

相続人の優先順位や相続する遺産の割合は、法律で決められています、例えば故人の配偶者は常に相続人になります。配偶者以外の人は順位に従って相続します。第1順位=個人の実子・養子、第2順位=直系尊属(目上の直系の血縁者・個人の両親など)、第3順位=個人の兄弟姉妹です。第1順位である「子ども」がいる場合は、第2順位以降に人物がいても相続人にはなりません。第1順位の「子ども」がおらず、第2順位の「ご両親」も他界している場合、はじめて第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。

相続の基本分配のまとめ
故人との関係 配偶者 子ども 直系尊属 兄弟姉妹
配偶者と子ども 1/2 1/2
配偶者と故人の直系尊属 2/3 1/3
配偶者と故人の兄弟姉妹 3/4 1/4
配偶者だけ すべて
子どもだけ すべて
両親だけ すべて
兄弟姉妹だけ すべて

相続人を調べる

相続の手続きを進めるためには、故人と家族の戸籍を用意しなければなりません。というのも戸籍があることで、初めて故人との相続関係を証明できるからです。また、すべて揃えることで、たとえば隠し子などの他の相続人がいないことの証明にもなります。
必要な戸籍は、故人が「生まれてから亡くなるまでの戸籍」と相続する家族全員の「現在の戸籍」(故人の現在の戸籍に名前の記載がある場合は不要)の2種類です。
戸籍は、転籍や婚姻、法改正などによって新しく書き換えられています、すべての戸籍を手に入れるためには、まず故人の本籍がある役場に問い合わせて戸籍を手に入れます。そこに書かれた情報をもとに、ひとつ前の戸籍がある役場をたどることができます。そうやって順番に戸籍を遡っていくことで、やがて故人の生まれたときの戸籍が手に入るわけです。同様に相続する家族全員の現在の戸籍も集めましょう。

戸籍について

「戸籍」とは大きな意味では、以下の3種類のことをいいます。

1.改製原戸籍(かいせいげんこせき・はらこせき)
2.除籍謄本(じょせきとうほん)
3.戸籍謄本(こせきとうほん)

この3種類です。同じ「戸籍」ということもあり似たようなものですから、この3つを厳格に区別できなくてもある程度の戸籍を集めることはできます。

戸籍を取得する先の市区町村役場とのやり取りでこの3つの区別することがあります。役場の人は、専門知識がない一般の方にもお構いなく「原戸籍(はらこせき)」、「除籍(じょせき)」、さらに戸籍謄本のことを「全部事項」(コンピュータ化された戸籍から出力する証明書のこと)と呼んだりするからです。実際に戸籍の請求を行うときにも申請書にこの3種類のうち、どの証明書を請求するのか指定するチェックボックスがあります。役場を相手にスムーズに戸籍を取得していくためにも、この3つの区別は大切なのです。

「謄本」と「抄本」の区別もある

他に、戸籍“謄本(とうほん)”と“抄本(しょうほん)”という区別もありますが、謄本が全て人物が記載されたもの、抄本は一部の人物が記載されたものという区別ですから、基本的に謄本だけ取得すれば問題ありません。

3種類の戸籍

1.改製原戸籍(かいせいげんこせき・はらこせき)

戸籍の1種である改製原戸籍は、「かいせいげんこせき」と読みます。一般的には「原戸籍(はらこせき)」と呼ばれることが多いです。この改製原戸籍は、名前で理解しようと思うと難しく感じますが、「改製される前の原(もと)の戸籍」という意味で、戸籍の様式の変更によって戸籍が新しいものに交換された場合の古い戸籍のことなのです

2.除籍謄本(じょせきとうほん)

除籍謄本も戸籍の1種です。役場の間では「除籍(じょせき)」と略して呼ぶことが多いです。除籍謄本はその呼び名の通り、「その戸籍に載っている人が全て抜けてしまい(除籍された)、誰もいなくなった戸籍」のことをいいます。「除籍」は、本籍地を変更した場合(転籍)、死亡した場合、結婚して新しい戸籍に移った場合に行われます。

<ポイント>閉鎖された理由によって呼び方が違う!

この改製原戸籍と除籍謄本の違いは、「どんな理由で戸籍が閉鎖されたのか」という違いです。全員がいなくなった戸籍が「除籍謄本」、新しい戸籍に切り替わった元の古い戸籍が「改製原戸籍」です。もう閉鎖されている戸籍のため、記載されている内容が変わることはなく、最新の改製原戸籍、最新の除籍謄本という概念はありません。相続手続に使う除籍謄本と改製原戸籍に有効期限がないことも、そのことが理由なのです。

3.戸籍謄本(こせきとうほん)

一方「戸籍謄本」は、改製原戸籍や除籍謄本のような“抜け殻”の戸籍ではなく、現在有効な読みやすい横書きの戸籍のことを戸籍謄本といいます。戸籍がコンピューター化されている市区町村では、戸籍謄本は「全部事項証明書」、戸籍抄本は「個人事項証明書」と読み替えられています。日本の戸籍に登載されることは、実は日本人であることの証明にもなっていて、結婚や相続手続の他にパスポートの申請をするときにも戸籍全部事項証明書が必要になります。今生きている人が載っていて、読みやすい横書きの一番新しい戸籍が戸籍謄本です。

そしてその戸籍から誰もいなくなったら除籍謄本、戸籍の改製によって切り替えられたら改製原戸籍に変わります。さらにポイントなのが、新しい戸籍には古い事柄は引き継がれないというルールです。4人家族の1人の兄弟が結婚して除籍になった後に、新しい戸籍へ切り替えられたら、その除籍になった兄弟は新しい戸籍には載りません。

相続関係説明図・法定相続情報一覧図の作成

<法定相続情報一覧図>の見本

上記は、「法定相続情報一覧図」の見本ですが、「相続関係説明図」も基本的に同じものです。
法定相続情報証明制度は、相続登記を促進するために平成29年5月29日から運用が開始された制度です。この制度を利用すると法務局から「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。
この「法定相続情報一覧図の写し」は、行政書士が「事実証明に関する書類」として作成している相続人の範囲を確定する書類(いわゆる「相続関係説明図」)に該当するものです。つまり、「法定相続情報一覧図の写し」は「相続関係説明図」の”役所ヴァージョン”ともいえます。
なお、相続手続きにおいて「法定相続一覧図の写し」の提出は義務付けられていません。従来からの「相続関係説明図」および相続関係を証明する戸籍謄本等を提出しても何ら問題ありません。

「法定相続一覧図の写し」は、申請する手間がかかりますが、都度戸籍謄本の束(特に戸籍が多い場合は分厚くなります)を提出・提示しなくても良くなります。相続財産が多岐にわたり、提出先が多くなる場合は便利です。

行政書士が法定相続人(申出人)の資格者代理人として「法定相続情報一覧図の写し」を取得する場合は、以下の必要書類の収集と、申請のための書類作成が必要です。

「法定相続情報一覧図の写し」を請求する場合に必要な書類
対象者 必要書類
被相続人(故人) ①出生から死亡までの戸籍謄本及び除籍謄本
②住民票の除票または戸籍の附票
相続人 ①戸籍謄本または戸籍抄本
②住民票の写し
申出人(相続人代表者) ①氏名・住所が確認できる次のいずれかの公的書類
イ)運転免許証のコピー
ロ)マイナンバーカードの表面のコピー
ハ)住民票の写し
代理人(行政書士) ①行政書士証票のコピー
「法定相続情報一覧図の写し」を請求する場合に作成する書類
  書類 内容
法定相続情報一覧図の保管および交付の申出書 不動産登記規則247条2項第1号~7号の内容を記載する
法定相続情報一覧図 交付される「法定相続情報一覧図の写し」はこの書類に記載された内容となります。
委任状 行政書士を代理人とするもの