運送業とは何か

運送業の3区分

トラックやトレーラー等を使用して荷物を運ぶ事業を一般的に「運送業」といいますが、運送業は貨物自動車運送事業法という法律で「一般貨物自動車運送事業」「特定貨物自動車運送事業」「貨物軽自動車運送事業」の3種類に区分されています。

 一般貨物自動車運送事業
他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のもの

特定貨物自動車運送事業
貨物の輸送の依頼主が特定の一者のみとなる運送業

 貨物軽自動車運送事業
軽貨物自動車を使用し貨物を運ぶ運送業

軽貨物自動車で1台で始められる「貨物軽自動車運送事業」の詳細は下記ページへ
軽貨物軽自動車運送事業はコチラ

緑ナンバーと白ナンバー

 緑ナンバー
他人の荷物を、お金をもらって運ぶ「営業用」
荷物の運送を専門に行う事業者が運行する営業用トラックに付けられる。


 白ナンバー
自分の会社の荷物を運ぶ「自家用」
自社のものを運んでいるトラックに付けられる。

運送業許可に必要な5つの要件

運送業許可には大きく分けて「資金」「場所」「人」「車両」「法令試験」の5つの要件が必要になります。この5つの要件をすべてクリアしないと、許可はおりません。

1.場所的要件

運送業を経営していくにあたり必要となる施設、具体的には「営業所」「睡眠施設」「休憩施設」「車庫」「(場合によっては)保管施設」に関して求められるものです。
これらの施設が、都市計画法、建築基準法、農地法、消防法、道路交通法等に抵触していないことが前提となります。これをすべてクリアしないと、許可は下りませんので、場所選びには最新の注意が必要です。
運送会社を営む上で、利便性を考えると車庫に営業所が併設されていることが理想です。ただ、「市街化調整区域は、車庫の土地利用料が安くて済むが、建物は立てられない」「営業所を優先し市街化区域に車庫を設けると、土地使用料に費用が掛かる」など、施設選びにはかなりの時間と労力が必要です。

2.資金的要件

事業を営むに足る資金を確保できているかを判断する条件のことです。
具体的には、一般貨物自動車運送事業許可申請の様式にある試算表をもとに計算し、その合計金額もしくはそれ以上の自己資金を残高証明書や通帳などで証明します。
必要金額とは
①人件費
②燃料費
③油脂費
④修繕費
⑤車両費
⑥施設購入・使用料
⑦什器・備品費
⑧保険料
⑨登録免許税(12万円)
⑩その他
(旅費、会議費、水道光熱費、通信費、運搬費、図書・印刷費、広告宣伝費等)
となり、従業員数や車両数、車両は購入かリースか、営業所は自己所有か賃貸かなどで、大きく変わってきます。

また、自己資金額については、所要資金の全額以上の自己資金が、申請日以降、許可日(または認可日)までの間、常時確保されていることが必要です。

3.人的要件

欠格事由に当てはまらないこと
事業主及び役員全員が、貨物自動車運送事業法5条の欠格事由に当てはまらないことが要件となります。

運行管理者を確保すること
営業所には、車両台数に応じた運行管理者を置く必要があります。申請時に確保できなくても確保予定で申請することができます。運行管理者は、運転者の乗務割の作成や休憩・睡眠施設の保守管理、運転者の指揮監督、点呼による運転者の疲労・睡眠・健康状態等の把握や安全運行の指示等、事業用自動車の安全を確保するための業務を行います。運行管理者の人数は、車両30台ごとに1名必要です。

整備管理者を確保すること
整備管理者は、自動車の整備や点検の実子、整備記録の管理、車庫の管理等を行います。
運行管理者のように人数に決まりはありませんので、車両が何台であっても営業所に一人を設置すれば、ルール上は問題ありません。ただし、台数が多くなると現実的には無理が生じるので、台数に合った整備管理補助者を選任するのが良いでしょう。ちなみに、運行管理者と整備管理者は、兼任することが可能です。

必要人数の運転者を確保すること
運送業の許可を取得するためには、最低でも5台の車両が必要となるため、運転者も最低5人が必要になります。

運転者ですが、日々雇い入れられる者、2カ月以内の期間を定めて雇用される者、使用期間中の者は認められません。また、事業用自動車を運転することができる自動車免許を持っていなければなりません。

4.車両の要件

5台以上の車両を用意すること
運送業を始めるためには、最低5台の車両が必要です。

車両ですが、車検証の用途のところに「貨物」と記載れていれば、ワゴン車でも四ナンバーの車でも問題ありません。ただし、軽自動車は含まれません。

車両の使用権限について
車両は車検証上の所有者や使用者が必ずしも申請者名義でなくても構いませんが、その場合は使用権原があることを、契約書などで証明する必要があります。よくあるケースとして、車両の所有者が会社の社長個人の名義になっていることがあります。その場合は、事前に会社への名義変更手続きが必要です。

5.法令試験

運送業許可を取得するには、役員が法令試験に合格しなければなりません。常勤の役員が複数いても、1回の試験には1名しか受験できません。この法令試験は運行管理者試験とは異なりますので、運行管理者試験に合格していても、この試験を受験する必要があります。

受験する人
法人の場合は常勤役員のうち1人、個人の場合は個人事業主

試験日
申請書が運輸支局で受理されると、試験日の約2週間前に案内の通知が申請者に郵送されます。
試験は奇数月に行われますので、2カ月に1回のチャンスとなります。

試験内容
試験時間は50分で、問題は全部で30問。問いは〇×式で24問正解で合格です(8割以上)。かなり厳しい試験ですが、運行管理者試験の問題が理解できていれば合格は十分可能です。当日参考資料などを持ち込むことはできませんが、関係法令等の条文が載った条文集が配布されます。

チャンスは2回
法令試験は1度失敗しても、1回だけ再試験のチャンスがあります。その2度目の試験は、別の常勤役員の方でも構いません。それでも失敗した場合は、申請の取り下げとなります。

試験結果
結果は1週間ほどで通知されます。

試験対策
国土交通省のホームページに「法令試験条文集」が掲載されていますので、印刷して何度も読み込んでおくとよいでしょう。
試験当日は条文集が配布されるので、すべてを暗記する必要はありませんが、試験時間は50分で30問ですので、条文をすぐに探せる程度の読み込みはしておいた方が良いと思います。運行管理者資格をお持ちでない方は、これを機に運行管理者資格を取ってしまうのも一考かと思います。

許可取得から運輸開始まで

運送業は許可が下りてすぐに事業が始められるものではありません。運輸開始届を出して始めて運送事業を始めることができるのです。運送業の許可を取得してから運輸開始までの流れは下記のとおりです。

 申請書の審査・法令試験の合格で許可となります。
    ▼
 運輸支局で許可書の交付式、講習会
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 登録免許税の納付(12万円)
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 運行管理者、整備管理者専任届の提出
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 社会保険関係の加入
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 運輸開始前の確認書
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 事業用自動車等連絡書の発行後、車両の登録
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 運輸開始届の提出(許可日から1年以内)
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 運賃料金設定届の提出
    ▼
 運輸開始から3~6カ月程でトラック協会適正化の巡回指導
 

許可後の各種届出等

運行管理者・整備管理者選任等届出書の提出
必要事項を記入し、管轄の運輸支局に提出します。
運行管理者資格証のコピー、整備管理者選任前研修修了証または、整備士合格証のコピーを貼付します。整備士の国家資格のない方は、整備管理者実務経験証明書が必要です。

社会保険関係の加入
運送会社は社会保険、労働保険の加入が義務付けられています。運輸開始前確認報告の添付書類として、社会保険や雇用労災保険の書類が求められていますので、それまでに入っておく必要があります。会社が適用事業所になるだけでなく、運転手が社会保険に加入済みであること、運転者全員が雇用保険に入る必要があります。

運輸開始前確認報告
こちらの報告書には、運行管理者、整備管理者、運転者の氏名や社会保険等の加入状況、車両一覧等を記入します。書類は、運行管理者・整備管理者選任届、選任運転者の運転免許証、労働保険関係成立届、社会保険の新規適用届などが必要です。

事業用自動車等連絡書の発行
保有の車両を営業用の緑ナンバーとして登録するために必要な書類になります。連絡書、手数料納付書、車検証のコピーを、新規申請の提出先と同じ輸送の窓口にもっていき、押印してもらいます。その後、自動車の登録窓口に提出します。

車検証の書き換えとナンバー変更
車検証の項目の中の「自家用・事業用の別」の欄に「事業用」と入れるための手続きになります。

運輸開始届の提出
事業用に書き換えた車両一覧や一般自動車損害保険(任意保険)の加入状況、社会保険の加入状況などを記載します。この届出を行って初めて運送事業を開始したことになります。

運賃料金設定届の提出
運賃料金を設定し、運輸支局に運賃料金設定届を出さなければなりません。また営業所に運賃料金表を掲示することが義務付けられています。特に決まった書式はありませんが、運輸局にひな型があります。

トラック協会適正化事業実施機関の巡回指導
運輸開始届を出すと、6カ月以内にトラック協会の担当者が営業所にやってきて、帳簿類のチェックなどを行います。これを巡回指導と呼びます。その後は、2~3年に1回のペースで行われます。
巡回指導が行われるときには、あらかじめ運送事業者に対して電話で告知があります。その後、実施される内容がFAXで送られてきますが、そこに書かれている帳簿類を揃えておくだけではなく、きちんと遂行されているかを確認されます。

運行管理の補助者の設置

運行管理者の補助者になるためには、基礎講習(3日間)の受講が必要です。
詳しくは、下記リンクをご確認ください。

運行管理者指導講習(基礎講習)