定款の記載事項
定款の記載事項には、絶対的記載事項、相対的記載事項および任意的記載事項があると言われています。
このうち、絶対的記載事項とは、会社法第27条第1項各号に挙げられている事項で、定款に必ず記載する必要があります。その記載を欠くか、記載内容が違法であるときは、定款全体が無効となり、ひいては会社の設立が無効となります。
これに対し相対的記載事項とは、定款に記載を欠いても、定款自体の有効、無効と関係ありませんが、定款に記載しておかなければ、その事項について効力が生じません。
そして、任意的記載事項とは、定款に記載を欠いても、定款自体の有効、無効とは関係なく、また定款にしておかなければ、その事項について効力が生じないわけではありませんが、取り扱いを明確化するため等の理由により定款に記載します。
絶対的記載事項
①会社の名称/商号
②会社の事業目的
③会社の本店の所在地
④会社の設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
⑤発起人の氏名および住所
⑥発行可能株式数(遅くとも設立手続きの完了時)
相対的記載事項
①変態設立事項
②株式の内容についての特別の定め
③株主名簿管理人の設置
④基準日の定め
⑤株主総会の通常決議の方法
⑥公告方法(定款で定めない場合は官報)
など
定款の構成
現在、株式会社において最も多く採用されている機関設計は、株主総会、取締役および取締役会、監査役を設置する会社ですが、これを基準に構成をご説明します。
尚、圧倒的多数の会社が横書き方式を採用しています。
定款は、下記のような章を設けるという形式で定型化されています。
第1章 総則 | 会社の根本原則として、「会社の名称/商号」「事業の目的」「本店所在地」「機関の設置」「公告の方法」など。 |
第2章 株式 | 発行可能株式総数、単元株式の定め、単元未満株主の権利、株主名簿管理人の設置、株式譲渡制限等に関する事項。 |
第3章 株主総会 | 株主総会の招集、定時株主総会の基準日、株主総会の招集権者および議長、決議方法、議決権の代理行使、議事録等に関する事項。 |
第4章 取締役および取締役会 | 取締役の員数、選任・解任、任期、累積投票の排除、代表取締役・役付取締役の選定、取締役の報酬等、取締役の責任免除、取締役会の招集、取締役会の招集権者および議長、決議方法、議事録、取締役会規則等に関する事項。 |
第5章 監査役 | 監査役の員数、選任方法、任期、監査役の報酬等、監査役の責任免除等に関する事項。 |
第6章 計算 | 事業年度、剰余金の配当の基準日、配当財産の除斥期間等に関する事項。 |
第7章 附則 | 変態設立の場合は会社法第28条各号の事項、設立に際して出資する財産の価額または最低額、発起人の氏名および住所・引受株数等に関する事項、最初の事業年度、その他の経過的事項等。 |
取締役会、監査役、会計参与等に関しては、必要に合わせて記載しますが、設置しない場合は、削除します。
中小規模で株式公開しない会社は、会社法上では「非大会社・非公開会社」という区分になり、これに応じた機関設計、株式の内容の定めが必要となります。
株式会社では、株主総会、取締役1人が必置です。取締役会を設置するためには、取締役が3名以上必要で、取締役会を設置したときは、原則として監査役を置くことが義務付けられていますが、非公開会社であって、かつ会計参与を設置する場合は、監査役を置かなくてもよいものとされています。
定款作成に必要な内容
定款作成にあたり、日本公証人連合会の定款例や、その他の定款例を参考に作成することができますが、下記の内容については、確認・設定しておく必要があります。
定款作成のための必要事項 | |
1.会社の名称/商号 | ・商号中に「株式会社」の文字を入れなければなりません。 ・ローマ字・アラビア数字を使用できます。 |
2.会社の住所(本店) | ・定款の記載は、市町村までで足ります。 ・登記には、何丁目何番何号という地番号まで必要です。 |
3.発起人の詳細と役職 | ・各発起人の氏名・住所・出資金の記載が必要です。 ・出資金の合計が資本金となります。 ・各発起人の役職も設定しましょう。(代表取締役・取締役・監査人・出資のみ等) |
4.事業の目的の設定 | ・目的たる事業の種類について、会社法に特別な制限はありません。 ・いくつも目的を設定して構いませんが、何をする会社か分からないような羅列は避けた方が良いでしょう。 ・建設業許可や障害福祉サービス業等、許認可を必要とする場合は、事業目的に必要な記載が求められますので、注意が必要です。定款変更・登記変更が必要になる場合もありますので、事前確認しましょう。 ・最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」と記載することができます。 |
5.資本金、株式関連 | ・資本金は、上記3の出資金の合計金額となります。 ・1株の価額、発行可能株式総数を設定しましょう。非公開会社の場合は、特に制限はありません。 ・非上場会社の場合は、「譲渡制限株式」の定めを置くことができます。会社として好ましくない者が新たな株主となることを阻止することができ、取締役会、株主総会、代表取締役を承認機関とすることが可能です。 |
6.会社の機関設定と任期 | ・取締役会の設置の有無(取締役3名以上の場合) ・監査役、会計参与などの設置の有無 ・取締役の任期=2年が原則ですが、非公開会社では10年以内の任期を設定できます。 |
7.決算期 | ・事業年度の設定 例「毎年4月1日から翌年3月31日までの年1期とする」等。 |
8.公告の方法 | ・官報、日刊新聞紙、電子公告のいずれかを定めることができます。 ・官報は標準的な大きさで75,000円程度です。 ・電子公告(ホームぺージ記載等)として登記する際には、ホームページのアドレスも登記しなければなりません。 ・定款に公告方法を定めない場合は、官報に掲載する方法となります。 |
上記は、絶対的記載事項を中心にシンプルにリストアップしたものです。
これらの他にも、「株主総会の決議方法」「属人的株式」「相続人等に対する売渡請求」「現物出資」「財産引受」「発起人の報酬」「設立費用」等、実情に合わせて記載すべき事項もあります。
定款の変更
「定款変更」は、定款の書き換えではありません。
こうした重要事項を定めた定款を変更すると聞くと、多くの人は「会社設立時に提出した定款の内容を変更する手続き」だと思うのではないでしょうか。しかし、会社設立時に提出した定款は「原始定款」と呼ばれ、これ自体が変更されることはありません。
定款の変更には、株主総会での特別決議と、その議事録が必要となります。費用がかかる場合もあり、気軽に変更できるものではないため、会社設立をする際には定款の記載事項を十分に吟味し、当分のあいだは変更の必要がなくなるようにしておきたいものです。
議事録の添付で新旧定款を照合可能に
定款の変更とは、変更点をまとめた議事録などを、原始定款に添付して提出することです。単に定款を書き直すのでなく、新旧の定款のどこが違うのかを照らし合わせられるようにします。
何者かが勝手に自分の都合のいい内容に書き換えないよう、最初の原本とその後の株主総会による議論と議決をすべて保管しておき、あとで履歴をさかのぼれるようにしておくのです。
登記申請の要否
定款の変更には2つのパターンがあります。1つ目は、定款を変更する際に登記申請が必要なもの、2つ目は定款変更の際に登記申請が不要なものです。
登記申請が必要なものとしては、以下のような変更があてはまります。以下は代表例となりますので、定款に変更を加える場合は手続きが必要か否かを調べることをおすすめします。
■登記申請が必要な定款変更事項
商号を変更する場合
事業目的を変更する場合
本店の住所を変更する場合
発行可能株式総数を変更する場合
公告方法を変える場合(官報に載せる、法務省の電子公告制度を利用するなど)
また、登記申請が必要ないものとしては「決算月の変更」が挙げられます。
定款を変更する際には、株主総会での特別決議が必要
定款の変更は、登記申請の必要・不要を問わず、株式会社の最高意思決定機関である株主総会での「特別決議」が必要となります。
特別決議とは? 決議の基準と定款変更の条件
特別決議とは、決議事項の中でも比較的に重要な承認事項を決定します。
ほかの決議との違いは、
決議に必要な定員数
賛成数
の2点です。
定款変更のような特別決議が求められる議題では、行使できる議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成がなければ否決されます。
※定款で「3分の2以上」よりも厳しい変更条件を設定していれば、それも有効です。
株主総会の議事録の保存と提出
株主総会は年に1回必ず開かなければならず、「資本的多数決」で賛否が決められます。
株主総会での資本的多数決とは、1人1票ではなく「1株1議決権」です。要は、その株式会社に最も出資している(最も経済的に貢献している)大株主に、強い決定権を持たせているのです。通常はその会社の社長や創業者が最大の株主でしょう。
定款変更にあたって登記申請が必要な場合は、株主総会で変更点について決定が下されたという議事録を法務局に提出し、登記申請をする必要があります。そして、変更が受理された場合、定款とともに、株主総会の議事録を保存しておかなければなりません。
登記申請がいらない定款記載事項は、決算月の変更です。この場合は、税務署への「異動届出書」の提出に株主総会の議事録を添える必要があります。
法務局へ登記申請する場合は費用がかかる
法務局へ定款変更の登記申請をしなければならない場合は、変更に費用がかかります。基本的には、登録免許税として3万円費用がかかりますが、法務局の管轄外に本店を移転する場合や、支店の設置・移転する場合は、金額が変わってくる場合があります。
また、変更内容によって書類も異なります。詳細は法務局のサイトからご確認ください。