自筆証書遺言書の保管制度
令和2年7月10日(金)より法務省における自筆証書遺言書の保管制度がはじまります。
(法務局における遺言書の保管等に関する法律_令和2年7月10日施行)
遺言といえば、
「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がありますが、「秘密証書遺言」はほとんど利用されていないので、実質2種類です。
それぞれに、メリット・デメリットがありますので、簡単に説明しますと
「自筆証書遺言」・・・基本的に手数料等の費用が掛かりませんが、財産目録以外は手書きで、かつ本人が亡くなった後、相続人が家庭裁判所に検認の申立を行わなければ有効となりません。
「公正証書遺言」・・・公証役場で保管してくれ、検認の必要もありませんが、証人が2名必要である点と、手数料がそれなりにかかるという点がデメリットではないでしょうか。
公正証書遺言の手数料は、財産の額によって変わってきますが、例として6000万円の財産を配偶者(1/2)、子2人(各1/4)に相続させるという遺言の場合、80,000円かかります。
これまでは、しっかりと遺言を残したい、残された相続人(配偶者や子など)に余計な手間をかけさせたくない場合は「公正証書遺言」。
相続内容が複雑ではなく、自分の遺志を残しておきたい場合、まだ公正証書遺言は必要ではないと考える場合は「自筆証書遺言」という風に分かれていました。
遺言は相続にあたって最優先されますので、遺言があることでスムーズに相続が進むことは多いです。自分の死後、遺産について身内が揉めることは避けたいところです。
本人は「たいした財産はない」と思っていても、承継する側は「たいした財産」と考えることはよくあります。平成30年度の「遺産分割事件の財産額」によると、1千万円以下の遺産で家庭裁判所で調停が成立した件数は2,476件で、総数(7,507件)の33%にも及びます。
ということで、コストは抑えたいが、遺族に余計な手間をかけさせたくないという方に適しているのが、「法務局における自筆証書遺言書保管制度」です。
少額の手数料で、自筆証書遺言書を法務局(=遺言保管所)に保管することができ、ご本人の亡くなった後、相続人が家庭裁判所に検認の申立をする必要もありません。
手順をご説明しますと、
- 自筆証書遺言を作成する。※自筆で実印を押印。財産目録は手書きでなくてもOK。
- 本人(遺言者)の住所地か本籍地を管轄する法務局を選ぶ。(大津地方法務局本局、彦根支局、長浜支局、甲賀支局)
- 該当法務局(=遺言保管所となります)へ申請の予約をする。
- 申請する。
①遺言書 ホチキス留めしない。封筒不要。
②申請書 事前にホームページからダウンロードし記入
③添付 本籍記載の住民票の写し(3カ月以内のもの)
④本人確認書類 マイナンバーカード、運転免許証(運転経歴証明書)、パスポートのいずれか
⑤手数料 収入印紙3,900円 - 保管証を受け取る。
保管番号が記載されておりますので、相続人にコピーをお渡しになっていると、その後の手続き等において大変便利です。
令和2年7月10日の開始に向けて、7月1日より予約が始まることのことですが、法務省ページではまだ詳細が出ておりませんので、追ってというところですね。
そして、法務局で自筆証書遺言書を保管している方が亡くなり、相続人がその遺言書を請求するときは、下記のような流れとなります。
- 請求書の作成
①所定の請求書を作成します。
②相続関係を証明するために
「法定相続情報一覧図の写し」もしくは「遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍)謄本、相続人全員の戸籍謄本と住民票の写し」が必要です。どちらも基本同じものですが、複数の相続手続きがある場合は、「法定相続情報一覧図」を作成しておくと便利です。 - 法務局へ交付請求の予約
基本的に、予約制です。新しく始まる制度ですので、突然行っても対応いただけません。 - 交付請求
請求書類一式
収入印紙1,400円 - 証明書を受け取る
こちらの証明書・遺言書で各種相続手続きができます。
(家庭裁判所の検認が不要です)
※証明書を受けとった相続人以外のその他の相続人等にも、証明書が交付されたことが通知されます。
※証明書の発行には、法定相続情報一覧図のような相続関係を証明する書類が必要ですが、遺言の内容を確認する(モニターで確認できる)だけなら、相続人であれば、顔写真付きの身分証明書(運転免許証等)と請求書でOKです。
相続登記の促進を図る施策のひとつではありますが、うまく利用できれば低コストで遺言書保管ができる制度です。